赤外線撮影の仕組み
*赤外線盗撮対策で水着が透けない水着に改良されたとか、透けないバレーボールユニフォームが出来たとか、「盗撮」がらみで話題になることの多い赤外線撮影ですが、ここで紹介する方法では水着もバレーボールも透けません(撮影してる光線の領域が異なるので根本的に無理な上、そもそも動くものの撮影はこのページで述べる方法ではほとんど不可能です)。盗撮画像やら盗撮方法やらの情報をお望みの方は諦めて下さい。
盗撮だとか透視だとかで悪いイメージの付いている赤外線撮影ですが、海外では赤外線写真(Infrared Photography)と言うのはアートとして人気がある撮影手法です。赤外線撮影を行うと太陽に当たった部分や植物が大変明る写る一方、光線を吸収しやすい水面や青空が暗く写ったり、人の肌が明るく発光しているように写るといった特徴があるためにドラマチックで印象的な写真をとることができます。また、靄のかかったような天気でも遠景までクリアに写るという特徴もあるため、山岳写真などでも使われる撮影方法です。技術力がありセンスもある写真家による赤外作品は本当に息を呑むような美しさです。(インターネットでも「Infrared Photography」などで検索すると赤外写真に特化したようなサイトをいくつも見つけることができます。また、Flickrなどの画像サイトでもたくさんの作品が公開されています。)
たとえば下の写真でみれば木々が大変明るく(白く)、遠景がクリアに写っているのがわかると思います。

その他の特徴としては、サングラスや車のスモークが透過して写る、薄い服や水着などの生地が透けて写る、真っ暗な場所でも投光機を用いることにより撮影することができるために防犯・監視目的や、夜行性の動物の観察などに使用される、などといった特徴もあります。肉眼ではどちらも真っ黒に見えるものが一方では白く写ったり、一方では黒く写ったりといった面白さもあります。

ところが、これまでのフィルムによる方法ですと高価で大変手間のかかるフィルムを使わねばならず(フィルムの保存期間が短い、冷凍保存しなければならない、装填に気を使う、など)、また露出の決定なども大変難しいものでした。また、現在ではフィルム自体が次々と廃盤になり、入手さえ難しい状況になっています。
赤外フィルムとしてもっとも有名だったコダック社のハイスピードインフラレッドフィルム(HIE)さえ廃盤になってしまいました(なお現在でも海外のいくつかのフィルムメーカーが赤外フィルムを製造しています。おそらく一番入手しやすいのはローライのものでしょう)。
それが、デジタルカメラを使うとフィルムよりも遥かに簡単に赤外線撮影をすることできます。デジカメを使う利点は多くありますが、「その場ですぐに画像をみることができる」「何枚撮ってもコストかからない」というデジカメの特徴は露出の難しい赤外撮影にとって非常に有利です。
デジカメをつかっての赤外線写真にも二つの種類があります。ひとつは、非改造のまま、IRフィルターをレンズの前にかざすだけで撮影する方法、もうひとつは改造して感度を高くして撮影する方法です。
そもそもデジカメで赤外線撮影がなぜできるのでしょうか。いったいどうゆう原理なんでしょうか。
赤外線というのは私たち人間には見えない領域(波長)の光のことで、デジタルカメラのセンサーにはこの領域の光線が見えているのです。しかし、もちろんデジタルカメラのセンサーには私たちの見える可視光線のほうがよりよく見えるように出来ています。分かりやすいように表にしてみると以下のようになります。
見えるが○。少し見えるが△。見えないが×です。
| - | 可視光線 | 赤外線 |
| 人間の目 | ○ | × |
| デジカメセンサー | ○ | △ |
このようにデジタルカメラのセンサーにとっても可視光線のほうが良く見え、赤外線のほうはホンの少しみえる程度ですから、普通に撮影する分には画像には赤外線はほとんど影響を与えず、人間の目で見たのと同じように撮影できるというわけです。そこで、可視光線のみをさえぎるフィルターを付けるとこのようになります。
| - | 可視光線 | 赤外線 |
| 人間の目 | × | × |
| デジカメセンサー | × | △ |
人間の目は可視光線しかみえないのですから、当然もう何も見えません。つまりこのフィルターは真っ黒なフィルタです。一方デジタルカメラは可視光線のみをさえぎっても赤外線はすこし見えるわけですから、赤外線だけで撮影できるという仕組みです。この可視光線をさえぎった方法による撮影方法を赤外線撮影といいます。

ただし、改造を加えていない通常のデジタルカメラと言うのは可視光線を映すのが目的ですから、赤外線に関する感度は低くできているのです。というより、赤外線による悪影響をできるだけ減らすためにセンサーの前に赤外線をブロックするフィルタがローパスフィルターに組み込まれています。赤外線の影響は通常の写真撮影には有害ですから、できるだけ減らしたほうが良いわけで、高級なもの、最新のものなどの方が高性能なフィルターをいれています。言うまで無く最新のデジタル一眼レフなどは非常に高性能なカットフィルター入りです。
2016.2.10.追記:「最新のデジタル一眼レフなどは非常に高性能なカットフィルター入り」だったのはこのサイトを開設した2009年時点の話であり、現在では、反対にローパスフィルターは解像度を低下させるなどとしてカットするのが主流になっています。が、だからといって赤外線感度があれば画像に悪影響を与えるのは同じ。現在のローパスフィルターレスカメラでも赤外線カットはされています。よって、普通の状態で赤外線に対する感度が非常に低いのは同じです。
2016.2.10.追記:「最新のデジタル一眼レフなどは非常に高性能なカットフィルター入り」だったのはこのサイトを開設した2009年時点の話であり、現在では、反対にローパスフィルターは解像度を低下させるなどとしてカットするのが主流になっています。が、だからといって赤外線感度があれば画像に悪影響を与えるのは同じ。現在のローパスフィルターレスカメラでも赤外線カットはされています。よって、普通の状態で赤外線に対する感度が非常に低いのは同じです。
感度が非常に低いということは、つまり、デジカメで赤外線撮影すると言うことは光の量が少ないのと同じ。夜に撮影をしているようなものなのです。ですので、夜景を撮影するときと同じようにシャッタースピードを遅くする必要があり、動いている人を撮影することは困難なのです。それどころか、夜景と同じように画質を良くしたかったり絞ってピントの合う範囲を広くしたかったりするなど、多くの場合において三脚が必要となってきます。手持ちでも無理とは言いませんが、夜景と同じように感度を高くするなどしないと撮ることができません。
ちなみにちゃんとした赤外線カメラ(暗視カメラ)というのはこのフィルターがなく赤外線部分の感度が高くなっており、可視光線の感度を減らした特殊なものです。赤外線カメラは感度が高いので動くものの撮影も可能ですから、赤外線照射ライトなどと併用して防犯用の監視カメラなどに利用されています。赤外線カメラを加えて表にするとこういう風になります。
| - | 可視光線 | 赤外線 |
| 人間の目 | ○ | × |
| デジカメセンサー | ○ | △ |
| 赤外線カメラ | △ | ○ |
さて、改造しないデジカメで撮影できると言っても、すべてのデジカメでできるわけではありません。デジカメによって赤外感度が違うため、比較的容易に撮影できるデジカメと、ほぼ不可能なデジカメがあります。実際に撮影するには、「赤外線撮影ができるデジカメ」と「赤外線フィルター」が必要になります。
なお上でも述べましたように、基本的には高級機ほど高性能なフィルターが仕込まれている傾向があるため、古かったり安価だったり小型のデジカメのほうが撮影は容易(感度が高いという意味で)です。たとえば、安物の代表である携帯カメラはかなり感度が高いです。ただし、そういうものは言うまでもなく画質が悪いため満足する画質のものを得ることはできないかもしれません。
デジカメの改造(ローパス除去)による高感度化
さて、以上が通常のデジカメにフィルターをつけるだけで、赤外線撮影する方法でした。しかし、もっとIR感度が高いほうがいい、ファインダーがブラックアウトしてしまうのは困る、などという人たちの間で行われているのがフィルターを取っ払ってしまう、という方法です。
この方法を行うと感度を非常に高くすることができ、またセンサー前にIR透過フィルターをつければ、ファインダーを見ながら撮影することができるため普通の撮影感覚で行うことができるのがメリットです。ネットを探してみるとカメラの改造方法に関して幾つかそういう情報サイトが見つかります。また、専門的に行っている業者もいくつか存在するようです。
今回、istDL2というデジタル一眼レフカメラからローパスフィルターを除去してみました。
- Updated! 2016.2.10.
約6年ぶりに更新しました - 非改造で赤外線撮影できるデジカメとは
向くデジカメと向かないデジカメの違い。向いているデジタルカメラのデータ。 - 赤外線フィルター
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・Olympus Camedia C-2000Zによる作例(2016/02/10更新)
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